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リレー小説『群青の月』 第十一回 担当:青柳

 彼はぼんやりと、駅までの道を歩いていた。
 美しい純子。舞台での彼女は、本当に輝いていた。その光があまりにも眩くて、眩暈を起こしそうだった。星のように、遠い存在。手が届くことは、きっとない。
 彼はまたひとつ、ため息をつく。これまでに何度ため息をついたのだろう。少し向こうが優しく接してくれたからといっても、自分も観客の一人に過ぎない。客席から彼女を見つめていて強く実感した。あの青年を演じていた男性――目鼻立ちがはっきりとしていて、自信に満ち溢れた雰囲気を漂わせている、同性の自分から見ても「いい男」だった――彼のような男こそが彼女の隣に立つべきなのである。
 ほんの一瞬でも夢を見ることができたのだから、これで良かったのだ。自分のような男は、女性との関わりに淡い期待を抱いてはいけない。勝手に自己嫌悪の海に沈んでいくところで、ぽんと軽く肩を叩かれて、振り向いた。
「あなた、このままで良いの?」
 彼に追いついた数子である。にんまりと笑い、彼の目をじっと見つめる。彼は突然声をかけられ驚いたのだろう、数子を見るとすぐに目を泳がせていた。
「え、あなたは」
ああ、これはちょろい。数子は何だか面白くなってきてさらに口角をつり上げる。
「私、純子さんと同じ劇団に所属しているの。さっきあなたが純子さんにお花、渡そうとしているところも見ていたのよ。折角なんだし、彼女とお話ししていかない?この後近くの居酒屋で打ち上げがあるから、おいでなさいよ」
 数子はよどみなく彼を誘う文句を言い連ね、彼の手をぎゅっと握る。
そうこうしているうちに、彼は焼き鳥の煙がたちこめる居酒屋の座敷席に座り込んでいた。純子は対角線上、一番遠いところに座ってビールを飲んでいる。彼は隣に座る数子に「さあさあ、まずは一杯どうぞ」とビールを注がれたので、場違いだとは思いながらもとりあえず喉を潤すことにした。
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1985年生まれ。

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