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リレー小説『群青の月』 第十五回 担当:長谷部

 彼と純子は、しばらくの間、何も言わず歩いた。ときおり彼が振り向くと、純子は顔をうつむかせたまま、彼の後ろをついてきている。彼は歩きながら、月を見ていた。そして舞台での純子を思い出した。狂気に堕ちた少女を演じた純子は、とても美しかった。だが、いま彼のやや後方を歩き、健とのことを思いふさぎこんでいる純子からは、その美しさを感じることができなかった。彼には、純子がただの少女に思えた。彼は重いため息をはいた。とたんに、それまで摂取したアルコールが彼の意識におそいかかり、そのまま地面に倒れこみそうになった。彼は足に力を入れ、ふみとどまった。意識が回復するまで、彼は純子に背を向け、立ち尽くした。純子は彼の背後で何も言わず、足を止めていた。
 体が少しらくになったところで、彼は純子の方を向き「タバコを吸ってもいいですか?」とたずねた。純子は少し顔をあげ、黙ったままうなずいた。「ありがとう」といい、彼はジャケットのポケットからタバコを取り出して火をつけた。
 このまま軽い挨拶をすませて、別れてしまおうかな、と彼はぼんやり考えた。だが、それでは何のために、勇気を出して純子のところへ声をかけに言ったのか、それに、純子が自分の思っていたような女性ではなく、弱いところも悩んでいるところもあるただの「人間」というだけで、切り捨ててしまっていいのか、そんな自分が許せるのか、……彼は自分に問い詰めていた。
 やがて、彼は短くなったタバコを地面に投げ捨て、純子のところに歩み寄った。
「純子さん」
 純子は顔をあげ、彼の目を見つめた。「はい」
「今度の休み、どこか一緒にいきませんか」
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黒石法師

Author:黒石法師
零円出版編集長
1985年生まれ。

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『零円』2号
発行:2010年3月25日

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古典常識一問一答〔人物編〕
入試でよく問われる文学史上の人物を中心に70名を取り上げ、5択のクイズ問題にしました。
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